まなざし、
たゆたい、
​かさなって。

⼀軒家に⼀⼈暮らしで過ごす視覚障害をもつ廣⽥エマ（ひろたえま）。 彼⼥の住む家のなかには、世界中の景⾊が広がっている。 彼⼥の⽗が遺した絵画や絵葉書が、 家からでることのない彼⼥の唯⼀の世界とのつながりであった。 そんなエマの家に空き巣強盗をするべく忍び込んだ柳真⼈（やなぎまさと）は、 あらゆる絵画や絵葉書に囲まれた空間に 呆気をとられている間にエマに⾒つかってしまう。 エマの⽬が⾒えていないことに気がついた真⼈は、 咄嗟に⼿にした⼿紙を元⼿に⾃⾝を“郵便配達員”だと偽る。 「⾃分は⽬が不⾃由だから、⼿紙を⾳読してくれ。」との申し出を渋々受け、 エマとの会話を重ねていくうちに、 エマが家中の絵画に“なにがどのように”描かれているかを、 すっかり覚えているということを知る。 ⾃分の知らない世界を、⽬の前で⾒ているかのように語るエマの姿に⼼ふるわせる真⼈。 次第に、彼はエマと同じ世界を⾒たいと考えるようになる・・・。